増補版 現代経営用語の基礎知識
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増補版 現代経営用語の基礎知識
はしがき

 経営学は企業を主要な研究対象とする学問である.経営学が誕生してからほぼ100年が経過したが,この100年の間に現実の企業や経営実践はきわめて大きな変化を繰り返してきた.この間にレコードやタイプライター等のように企業によって生産が始められ,そして消滅していった製品も多い.近年のIT関連技術やサプライチェーン・マネジメント,POSシステムなどのような広く普及している生産システムもやがて消滅してゆく日がくることになるのであろう.企業は社会の創造物であるが,企業自身も自らの力で自己変革を繰り返してきた.そればかりでなく,企業は,社会そのものさえダイナミックに変革してきた.

 このように動的に,自ら進化する企業を研究対象とする経営学も企業と企業活動自体の変化に即応して変化・発展してきた.そして経営学に用いられる専門用語もまた変遷してきた.20世紀はエネルギー革命と情報革命の世紀であったといわれる.そして今日,社会変革を主導する技術は既にIT技術から生命科学技術へと移りつつあるといわれる.

 経営学辞典は経営学を学ぶ人たちに対してもっとも基本的な用語を説明するだけでなく,このような現実の社会と企業および企業実践における変化にすばやくそして適正に対応していくものでなければならないであろう.企業実践の現場では,最新の科学技術の導入や新しい生産システムの開発が盛んであるが,他方企業と社会の関係を再定義する動向が,とくに欧米において顕著になっている.企業統治,企業倫理,ステークホルダー・マネジメントなどの分野の研究の活発化がそれである.たとえば,アメリカでは企業倫理という科目は,ほとんどの大学において,経営学部,ビジネス・スクール,大学院博士課程の必修科目となっている.また,欧米の企業においては企業倫理やコンプライアンスは非常に重視され,積極的に取り組みが進められている問題領域であり,深刻な企業不祥事が起こるたびに企業倫理の科目設置が企業経営者の側から大学に対して強く要請されてきた.この事実は,この問題領域がいかに強い社会的ニーズをもつものであるかということを示している.

 経営学は学際的な学問であり,そこで用いられる専門用語はさまざまな学問領域に及んでいる.広い学問領域に及び,また代謝の激しい経営学の専門用語の中から経営学辞典の項目としてわずか1000余りの掲載項目に絞り込むのは困難な作業であった.しかし,上述のような社会情勢,企業環境の現状を踏まえ,本辞典はまず経営学を初めて学ぶ人たちにとって必要不可欠な経営学の基礎的用語項目をリストアップした上で,経営学の新しい分野であるIT技術関連,企業統治,企業倫理,企業と環境,国際経営などの領域の用語項目の比率を意識的に高くした.

 最新の経営学の動向を踏まえて項目設定をしたことに加え,近年の電子出版の普及をも考慮し,インターネットで引けるようにしたことも本辞典の大きな特徴である.パソコンを用いて縦横に用語検索ができるだけでなく,掲示板によって読者間のコミュニケーション,場合によっては読者と執筆者・編集者とのコミュニケーションも可能となった.インターネット上の項目は,比較的容易に追加や修正が可能であるので,書物の再版を待たずに項目の追加・加筆などを行っていく予定である.読者諸賢の建設的なご意見をお待ちするしだいである.

 「インターネットでも引ける辞典」という意味で,本書は画期的な意味をもつ辞典であるということができる.今後読者とともに内容をさらに豊かに,また利用者のニーズにいっそう応えたものに柔軟に発展させていくことも可能である.本書出版のアイデアをいただき,また刊行まで物心両面で編集委員・執筆者にご支援いただいた学文社社長田中千津子氏に,執筆者・編集委員を代表して厚く御礼申し上げる.

2001年3月編集代表 佐久間信夫



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 2001年4月に『現代経営用語の基礎知識』が刊行されてから4年半が経過した.4年半という短い歳月のうちに企業経営を取り巻く環境は大きく変化した.

 たとえばコーポレート・ガバナンスをめぐっては,アメリカで,エンロンの破綻およびそれを受けたアメリカ企業改革法の制定,上場企業会計監視委員会(PCAOB)の発足など法制度の大きな変更がみられる.日本においては委員会等設置会社の導入や会社法の制定とそれによる合同会社の新設や有限会社の廃止など法制度が刷新された.

 世界経済に目を転ずると,この数年ブラジル,ロシア,インド,中国のいわゆるBRICsの台頭が顕著である.日本の最大の貿易相手国はアメリカから中国に移り,先端産業までが中国に生産拠点を移転しつつある.一方EU諸国においては,2002年1月に共通通貨ユーロが流通を開始し,ドルとならぶ基軸通貨としての地歩を固めつつある.2004年5月にはEU加盟国は10カ国増加し25カ国体制となり,アメリカを凌ぐ4億5000万人の市場が誕生した.エアバスの成功にみられるように,1993年のEU市場統合以来,EU企業の国際競争力は格段に強化され,世界的な巨大企業がEU域内に続出している.

 一方,企業の社会的責任(CSR)に対する関心は年々高くなり,現在では多くの日本企業が社会的責任報告書を公表するようになった.数年前までは企業の社会的責任は環境問題が中心であり,環境報告書の公表がほとんどであったのとは様変わりの感がある.
 このようにわずか4年余りの間に企業の経営環境は激変し,全く新しい経営用語も続々と生まれた.旧版の内容に改訂を加えなければならない項目も出てきた.5年を経過せずして増補版を出版するゆえんである.

 増補版は旧版に比べ,項目数を464項目増の1048項目とし,より利用し易いものとした.また,旧版に比べサービスは制限されるものの,インターネットでの項目検索も引き続き利用できるようにした.合わせて利用していただければ幸いである.

2005年8月編集代表 佐久間信夫


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