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■ライセンシング(licensing)
ライセンサー (licensor:特許権などの権利保有者)が保有する諸権利をライセンシー(licensee:特許権などの権利行使の許可をうける者)に対して提供する契約をいう.ここでいう諸権利にはノウハウや特許(patent),商標(trade
marks),営業秘密(trade secrets)といったものがあげられる.OEM
(Original Equipment Manufacturing)供給やフランチャイズ・システム(franchise
system)は,ライセンシングの代表的な一形態である.国際ビジネスにおいてライセンシングは,輸出,対外直接投資と並ぶ重要な国際取引形態のひとつである.→OEM,知的所有権,ロイヤルティ[安田賢憲]
■ライフサイクルコスティング (life-cycle costing)
製品を企画・開発・設計する段階から使用を経て廃棄に至るまでの各段階で発生するコストをライフサイクルコストという.したがってライフサイクルコスティングは,製品のライフサイクル全体のコストを分析するための計算方法である.だが,製品ライフサイクルの解釈の相違によって,その範囲や内容には論者によって異なる.
従来の原価計算が生産ないし販売活動のアウトプットである製品ないしサービスのコストだけを計算対象としていた点で,ライフサイクルコスティングは大きく異なっている.ライフサイクルコスティングの登場してきた背景には,従来のように製品購入コストの比較による調達部面の意思決定と,調達後の製品の維持管理との2段階で経済性を追求するのではなく,多くの場合トレード・オフの関係にある両者を併せて総合管理する必要性が高まったことがあげられる.これを消費者サイドからみれば,競争優位性の確保や環境保全活動の高まりを背景として,製品購入後に発生する使用コストや廃棄コストを最小にすることへの認識が高まってきた点に,ライフサイクルコストを測定し,分析する重要な意義がある.[古庄 修]
■ライン組織/職能組織/ライン & スタッフ組織らいんそしき
ライン組織とは,トップからロワーに至るまで単一の命令系統によって結ばれている組織形態のことをいう.この形態においては,組織メンバーは直属の上司のみから命令をうけることとなる.命令系統が単純であるため,責任・権限の関係が明確であるという長所を有する一方で,専門化の効果を発揮しにくい,水平的なコミュニケーションが停滞しがちである,上司の負担が過剰となる傾向がある,などの短所も指摘できる.
職能組織 (ファンクショナル組織) とは,テイラー(F.W.Taylor)の提唱した職能別職長制に基づくもので,職能別の専門化がなされている組織形態である.この形態においては,組織メンバーは直属の上司のみから命令をうけるのではなく,おのおのの専門職能を担当する複数の上司から,その職能に関する事項についてそれぞれ命令をうけることとなる.管理者の負担が軽減される,部下の指導を専門的に行うことが可能となる,仕事の標準化が容易となるなどの長所を有する一方で,命令系統が多元化し命令の重複や矛盾を生じやすい,各専門職能を相互に重複しないように分化するのは現実的にむずかしい,などの短所も指摘できる.
ライン&スタッフ組織とは,ライン組織と職能組織の双方の利点を取り入れようとした,つまり,命令系統の統一性を維持しつつも,専門化の利点を追求する組織形態である.この形態は,執行職能と管理職能を含むライン組織と専門的知識をもって助言を行うスタッフ組織の双方から成り立っているのであるが,命令や決定の権限はあくまでもラインが握っており,スタッフの役割は助言や助力に限られている.この形態は,今日広く採用されている組織の基本形態となっているのではあるが,ラインとスタッフとの間のコンフリクトや,スタッフの増大が間接費の増大を招く,などの短所も指摘できる.→科学的管理[青木克生]
■LAN/WAN (Local Area Network/Wide Area Network)らんわん
LAN(企業内情報通信網)とは,事務所,ビルディング,企業,学校のような比較的限定された範囲内でハードウェア,ソフトウェア,データ等のさまざまなコンピュータ資源を共有するために通信ケーブルで接続されたコンピュータ,端末,OA機器の集まりをいう.よく知られているLANの形態は,スター型,バス型,リング型とよばれるものである.LANでは,他のパソコンのハードディスク上に存在するデータを,あたかも自分自身のパソコン上のデータであるかのように読むことができたり,他のパソコンに接続するプリンターを使って自分のファイルをプリント・アウトさせることができる.また,適切なサイト・ライセンスを取得した上で,アプリケーションをLAN上の複数のユーザーで共用するという資金節約的な使用も可能となる.LAN機能を一地域,一都市の空間的規模にまで拡大した場合をMAN(Metropolitan
Area Network)という.
WAN(広域情報通信網)とはMANよりさらに大きな空間的規模,たとえば全国あるいは国際的規模で結合し,LANと同様の機能を実現させる広域ネットワークである.[福多裕志]
り
■利益管理(profit management, profit control)りえきかんり
企業利益の増大および投下資本の回収をはかるための管理のこと.古典的な利益管理は,成行管理とよばれ,単に予定収益から予定費用を差し引き計画利益を導くものであったが,近年のそれはあらかじめ達成する予定利益を決定し,これを導くために許容費用がいくらまで認められるかを検討するという計画管理に移行している.
とくに今日の利益管理は,機関株主・投資家の台頭を背景にして,投資家の立場からみた利益率指向(ROE重視)が強まっている.したがって予定収益をいかに引き上げるかではなく,目標利益を達成するためにいかに費用を削減するかというリストラ先行の内容になっている.しかも目標利益は,機関株主・投資家市場において引上げ競争状態となっているので,いかに利益率を上げるかをあらゆる局面で検討しなければならない.近年注目されている手法は「選択と集中」とか「特化」という言葉で示されているように,経営資源を利益率の高い分野に集中することによって,さらに利益率を引き上げていこうというものである.また資産流動化による固定費の変動費化も注目されている.固定費の変動費化とは,費用の柔軟化だということができる.設備に伴う減価償却費という固定費をたとえばリース料という変動費的なものに転換し,売上げの変化に対応するかたちで損益分岐点を下げていく手法である.この手法は固定費である人件費にも応用できる.たとえばアルバイトや派遣労働者の利用であるが,さらに最近では単純労働だけでなく,研究労働者にも適用されている.産学共同として進められている大学でのTLOにおける委託研究は人件費という固定費の研究費への変動費化であり,雇用局面でもみられる現象である.[坂本恒夫]
■利益集団(interest group)
スウィージー(P. M. Sweezy)は,アメリカにはモルガン=ファースト・ナショナル(Morgan=First
National),ロックフェラー(Rockefeller),クーン・ロープ(Kuhn
Loeb),メロン(Mellon),デュポン(Du Pont),クリーブランド(Cleveland),ボストン(Boston)の8つの利益集団が存在することを指摘した.アメリカの資産額で最大200の非金融会社と50大金融機関の合計250社のうち106社が8大利益集団のいずれかに属し,ひとつの利益集団内の企業は重役兼任や株式の持合いなどによって緊密な関係をもっている.また同一の利益集団内の企業は特定の投資商会によって設立され,証券の発行もこの投資商会によって行われている.
日本の企業集団との相違はそれぞれの集団が互いに閉鎖的でなく,重役兼任,出資関係等において他の集団とも関係をもっていることである.→企業集団[佐久間信夫]
■利益の星座状連関による支配
現代の大規模株式会社においては,バーリ&ミーンズ(A.A.Berle &
G.C.Means)の支配形態分類にあるような過半数所有支配や少数所有支配に相当するようなまとまった株式を所有する所有主体はほとんど存在しない.大規模株式会社の大株主は法人企業や金融機関によって占められているのが普通であるが,これらの法人大株主同士はさまざまな利害を通じた結合関係をもっている.
イギリスの社会学者スコット(J. Scott)は,現代の大規模株式会社の支配主体はこのような法人大株主がゆるやかに結合した「利益の星座状連関」(constellation
of interests)であると主張した.スコットは経営者支配説を否定し,相対的大株主集団が「戦略的支配」によって,すなわち,会社戦略を統制しそれに強い影響力を与えることによって,支配を行使する,「利益の星座状連関による支配」論を展開した.→金融支配説,経営者支配説,支配形態,所有者支配説[佐久間信夫]
■利害関係者(ステークホルダー; stakeholder)りかいかんけ
1963年に,スタンフォード研究所によって創案されたものであるといわれ,アンゾフ(H.
I. Ansoff)の『企業戦略論』の中でもステークホルダー(stakeholder)について取り上げられている.その意味するところは,その支持がなければ企業が存続できないような個人,集団であり,企業に対し利害関係があると主張する個人,集団である.具体的には,株主,債権者,従業員,顧客,納入業者,政府,地域住民などをさし,公衆や自然環境をも含めることもある.ポスト等は,企業の事業活動に直接的にかかわっている,株主,債権者,従業員,顧客,納入業者などを第一義的利害関係者とよび,政府,地域住民,公衆,各種利益団体などを第二義的利害関係者とよんで区別しているが,これは,企業にとっての重要性から区別されるものではない.
現代の企業社会は,株主利益の追求を第一に考える,株主資本主義の時代ではなく,利害関係者の利益の調和を重視する,利害関係者資本主義の時代であるという見方も欧米ではみられるようになっている.たとえば,一部の利害関係者には大きな利益がもたらされるが,そのために多くの利害関係者を犠牲にするような,M&A(合併・買収)については,アメリカの多くの州で規制するようになっている.コーポレート・ガバナンスの問題においても,株主と経営者との関係ばかりでなく,企業と利害関係者との問題も取り上げられている.また,経営社会関係論や企業倫理学においては,利害関係者ごとの倫理的課題事項について分析する,利害関係者アプローチも採用されている.→企業倫理,正当性,倫理的課題事項[出見世信之]
■リース会計 (accounting for lease)りすかいけい
特定の物件の所有者である貸手(lessor レッサー)が,当該物件の借手(lessee レッシー)に対し,一定の期間(リース期間)にわたりこれを使用する権利を与え,借手はその対価として決められた使用料(リース料)を貸手に支払う取引をリース取引という.これを借手の立場から捉えれば,リース取引は,資産の購入資金の融資を受ける代わりに,リース会社等の貸手が購入した資産そのものを融通してもらう金融機能を有する.その意味でリースは「物融」ともいわれる.なお,リースは,一般に企業が主体となって事業機械設備等の調達手段として利用される長期的な賃貸借契約であり,また原則として中途解約が禁止されている点等で,レンタルとは区別される.
リース取引は資産の所有権が貸手から借手に移転しない点に特徴があり,法形式上は賃貸借取引となる.だが,取引の実態が物件の売買に相当するとみなされる取引を賃貸借取引として処理すれば,その経済的な実態が会計上適正に反映されないという問題が生じる.
1993年5月に大蔵省企業会計審議会が公表した「リース取引に係る会計基準に関する意見書」は,リース取引を大きくファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分け,「経済的実質優先思考」(substance
over form)に基づく会計処理を規定している.
ファイナンス・リース取引に分類されるのは,@リース契約に基づくリース期間の中途で当該契約を解除することができない(ノンキャンセラブル),(2)リース物件から生じる経済的便益を借手が実質的に享受することができ,かつ(3)物件の使用に伴って生じるコストを借手が実質的に負担する(フルペイアウト)の要件を満たす取引である.
ファイナンス・リース取引は,さらに所有権移転リース取引と所有権移転外リース取引に分類され,前者は通常の資産の購入取引に準じた会計処理,すなわち売買処理され,リース開始時にリース物件がリース資産として,またこれに対応するリース料支払総額がリース負債として借手の貸借対照表に計上される.後者については,売買処理を原則とするが,注記における売買処理に相当する情報の開示を条件に,賃貸借処理も容認されている.ファイナンス・リース取引以外のリース取引はオペレーティング・リース取引と定義され,賃貸借処理を行う.
わが国におけるリース取引の大半は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当し,したがって現行の会計基準の下では,貸借対照表にオンバランス化されるファイナンス・リース取引はほとんど存在しないことが指摘されている.[古庄 修]
■リスク細分型自動車保険りすくさいふ
契約者のリスクに応じた保険料率を設定できる自動車保険のこと.従来,日本では画一的な保険料率の設定が採用されてきたが,1996年12月の日米保険協議において,97年9月からリスク細分型自動車保険の販売が解禁された.現在,年齢・地域・用途・運転歴・使用類型・車種・安全装置・複数所有など危険要因を9つに分類し,これらの組み合わせにより契約者のリスクに応じて格差をつけた保険料率が算出される.ただし,契約者の年齢別による格差は最高3倍まで,などの制約がある.また,対人賠償保険に関しては,原則として引受拒否が禁止された.
この自動車保険を主力商品とするのは主として外資系損保会社であり,通販中心で販売している.通販とは,保険会社が新聞やテレビ等に広告を出すことによって,それをみた見込み客が保険申込みを電話で済ませるというシステムである.消費者に直接保険商品を販売するため代理店手数料等がカットされ,その分,保険料の安い商品を販売できるというメリットがある.新規参入の外資系とは異なり,多くの代理店をかかえた国内損保会社が通販に移行するのはむずかしい.そこで,国内損保会社の中には人身傷害補償保険を取り入れた自動車保険商品を開発するなど,損保業界では今までにない激しい競争が繰り広げられている.→保険料率の自由化[恩蔵三穂]
■リストラクチャリング(restructuring)りすとらくち
事業の再構築を意味する言葉である.リストラクチャリング(リストラ)には,単に不採算部門の整理だけでなく,本来有望な分野への進出といった本来前向きな要素も当然含まれるはずである.ところが,1990年代初頭のバブル経済崩壊以降,多くの企業がなりふりかまわぬ後ろ向きの人員削減を進めた結果,「リストラ」といえばわが国では「人員削減(解雇)」を意味することになってしまった.
バブル崩壊後の円高によって不況が長期化する中で,企業の人員削減は退職者の不補充,配転・出向から,「リストラ」という名のもとでの正社員の削減にまで突き進んだ.この時「リストラ」の対象となったのは,バブル期に肥大化したホワイトカラーの管理職であり,1993年12月には,希望退職の募集・勧奨退職等の形で「リストラ」の対象とされた管理職たちが,会社の枠を越えて団結し,個人加盟の管理職組合「東京管理職ユニオン」を結成せざるを得ないほどに「リストラ」が一般化するに至った.
ここには,社会主義崩壊後多くの国々が市場経済へと参入し,90年代以降,メガ・コンペティションとよばれる大競争時代が出現したことも大きく作用していた.[那須野公人]
■リソース・ベースト・ビュー(RBV: Resource-Based View)
企業内部の経営資源に注目して,企業業績の差異を説明しようとする考え方.1980年代半ば以降,戦略論のひとつの潮流を形成してきた.それまでの戦略論は,企業の属する産業構造とその市場地位によって競争優位が決定されるというポーター(M.
E. Porter)理論に代表されるように,企業業績の決定因を主に外部環境要因に求めてきた.それに対して,リソース・ベースト・ビュー(以下,RBVと略称)は,外部環境要因に焦点を当てた議論が企業の異質性を軽視している点を問題視し,企業の保有する経営資源の異質性が競争優位の源泉であると主張する.
RBVの重要な貢献のひとつは,どのような特徴をもつ経営資源が競争優位の持続性をもたらすのかを明らかにしたことにある.ディリックスとクール(I.
Dierickx & K. Cool)は,経営資源の取引可能性に着目した.彼らによれば,企業特殊的なノウハウやブランドといった過去の行動の結果企業内に蓄積され,その時々の事情に応じて外部から簡単に調達できない経営資源は,競合企業に対する有利な資源ポジションを持続させる可能性が高いとされる.またバーニー(J.
Barney)は,顧客に価値をもたらすうえで役立つこと,希少であること,完全な模倣が困難なこと(模倣困難性),戦略上同等もしくはそれ以上の代替が存在しないこと(代替困難性)という4つの特徴をもった経営資源が持続的競争優位に寄与すると論じた.
RBVは,外部から簡単に調達できず競合企業にとって模倣や代替が困難な経営資源に基づいた戦略の重要性を示唆したが,他方で,ストックとしての経営資源を前提とした静学的な分析に終始しているという限界を指摘されてきた.その後,こうした限界を克服すべく,RBVの焦点は,経営資源が蓄積されていくプロセスや経営資源それ自体の開発を含む動学的分析に向けられていった.→ケイパビリティ,ポジショニング・スクール[遠藤健哉]
■リーダーシップ(leadership)りたしつふ
権限の有無にかかわらず他者に影響を与えて,ある目的を達成するための行動を引き出す能力.他者に影響を与える基盤としては,公式の権限だけではなく,情報・知識,優れた実績・評判,公式の権限,必要な諸資源を集められるネットワーク,好ましい対人関係が必要である.
さまざまな役割と性格をもった社内・社外の多様な人びとが相互に協力しあっている企業は,その内部において対立する可能性を絶えずはらんでいる.こうした対立を最小限にとどめつつ,よりよい成果を引き出すことがリーダーシップの役割である.そのためには,さまざまな利害関係者がどのような利害をもっているのかを正しく把握し,お互いの人間関係を読み取った上で,めざすべき目的に向けて彼らに影響を与え,実行させる対人関係能力が必要となる.他方,不確実な将来にむけてビジョンを提示し,場合によっては組織の過去の仕組みや風土を変革していくために,そのビジョンが組織に受け入れられるよう働きかけてイノベーションを引き起こすこともリーダーシップの重要な役割である.[秋野晶二]
■リッカート(Likert, Rensis, 1903〜1981)りつかと
アメリカ生まれ.ミシガン大学社会調査研究所を率い,多くの実証研究から行動科学的な人間関係論を開拓した.組織の管理スタイルを,管理者の部下に対する信頼と意思決定の仕方によって,システム1からシステム4に分類.チームワークと相互信頼に基礎を置く管理スタイルがとられるシステム4がもっとも高い生産性をあげるとした.彼の第2の功績として,心理測定方法としてのリッカート尺度(スケール)を考案したことがあげられる.[木村有里]
■立地特殊優位
グローバル企業の競争優位の源泉は,立地特殊優位と企業特殊優位に大別できる.天然資源や労働力など国によって有する資源の状態は異なる.したがって,生産コストも国によって異なることになり比較優位を有する国がその製品に特化する方が有利であると示したリカード(D.
Ricardo)やヘクシャー・オーリン(E. F. Heckscher &
B. G. Ohlin)の比較優位理論も立地特殊優位に着目したものである.ポーター(M.
E. Porter)は,立地特殊優位を決定する4つの要因として要素条件(熟練労働者やインフラ整備など),需要条件(市場の需要の性質),関連・支援産業(国際競争力をもつ関連産業の存在),企業の戦略・構造及びライバル間競争をあげている.→比較生産費説,マルチドメスティック産業/グローバル産業[池田芳彦]
■リテール・バンキング(retail banking)
小口の個人取引や中堅・中小企業取引の預金・貸出に銀行業務を特化した銀行経営のことで,一般に,小売(リテール)銀行業務とよばれる.これは大企業向けを中心とした卸売(ホールセール)銀行業務と対比させた概念である.従来,都市銀行を中心とした日本の大手銀行は,銀行業務に占める個人取引のウェイトは高くなかった.個人預金は安定的な資金調達の手段として位置付けられていたが,その多くは法人向け貸出に向けられ,残りは住宅ローンで運用しているのが実態である.2000年に入って,個人取引に活発に力を入れているのは,個人向け金融の成長性を期待してのことであるが,これまでの預金と住宅ローン中心の取引では限界がある.リテール特化型の店舗やインターネット・バンキング,コンビニ・バンキングなど消費者に近いチャンネルを整備し,顧客利便の向上とローコスト化をはかることが急務とされる.
一方,中堅・中小企業取引ではリスクに見合った利ざやの確保が課題である.1980年代以降,銀行は表面的な金利の高い中堅・中小企業貸出を拡大し,リスクについては不動産担保でカバーしてきた.しかし,資産価値の下落によって有担原則という前提条件が崩壊した.この分野への運用の圧縮を図った結果が,バブル経済崩壊後にみられる,銀行の「貸し渋り」現象として社会問題化している.→ホールセール・バンキング,ユニバーサル・バンキング[三浦后美]
■Linux
1990年代初頭,ライナス・トーヴァルズ(Linus Torvalds)によって開発された,UNIXと互換性をもつオペレーティング・システム(OS)のこと.
Linuxは,ソースコードが公開されており,誰でもソースコードを無料で入手し目的に応じて自由に改変できるという点が大きな特徴である.現在も世界中の有志によってバージョンアップが続けられている.Linux上で動作するウィンドウ環境としては,UNIXと同様,「X
Window」というウィンドウ環境が用意されており,この環境で動作するアプリケーションとして,ウェブブラウザ,メールソフト,テキストエディタなどを始めとして,さまざまなものが開発されている.これらのアプリケーション,Linux本体,インストールプログラム,開発ツールなどの一式が「ディストリビューション」とよばれる形態で配布されている.Linuxは通常のパソコン用OSとしても使われているが,その一方で,学術機関や企業内の各種サーバ用のOSとしても広く浸透している.Linuxには,導入コストが低いという利点がある一方,基本的には特定の企業等による動作保証・サポートはないため,Linuxをベースとしたシステムの構築・運用にはある程度の知識が必要である.[熊谷敦也]
■流通チャネル戦略(distribution channel strategy)
4Pのうちのひとつである販売経路に関する戦略.現代社会では生産と消費がさまざまな面で分離している.生産する人と消費する人が異なり(人的懸隔),生産時点と消費時点が異なり(時間的懸隔),生産場所と消費場所が異なり(地理的懸隔),生産側の意図と消費側のニーズが異なる(社会的懸隔)などの隔たりが存在する.その隔たりを埋めるものとして,国民経済的な広い視点に立って捉えられるものが流通であり,多くの場合,生産段階,卸売段階,小売段階,から構成されている.その流通を個別企業というミクロ的な視点にたって眺めた時,生産から小売までの製品の具体的な流れ道を販売経路という.販売経路として人的・時間的・地理的懸隔を埋めるべくうちたてられた戦略を流通チャネル戦略という.より具体的には,どの卸売業者を経由するか,どの小売業者の店頭に製品を陳列するか,どの物流業者を利用するか,などの意思決定を長期的な視点に立って行う.従来は販売経路の各段階で生ずるさまざまな問題を個別に解決・管理してきたが,近年では,サプライチェーン・マネジメントの考え方を取り入れ,製品供給を行う一連のシステムとして販売経路全体を管理するような戦略が注目を浴びている.→サプライチェーン・マネジメント,マーケティング・ミックス[金子武久]
■流動比率(current ratio)りゆうとうひ
流動比率とは,会社の短期支払い能力を判断する指標である.その比率は,以下の算式で表わされる.〔流動比率=流動資産÷流動負債×100%〕.流動資産には,1年以内に現金化される資産であり,現・預金,受取手形,売掛金,●卸資産,短期的に保有している有価証券などが含まれる.一方,流動負債は1年以内に返済しなければならない負債であり,短期借入金,買掛金などが含まれる.流動比率によって,流動負債の何倍にあたる流動資産を有しているのか,さらにその流動資産によって流動負債を,どの程度まで返済することができるのかを判断することができる.流動比率が高いということは,現金化される資産額が負債額よりも大きいことを意味し,企業の短期の支払い能力が高いことを示している.[森谷智子]
■量子コンピュータ(quantum computer)りようしこん
量子力学的な状態の重ね合わせを利用して計算を行うコンピュータ.通常のコンピュータでは0と1でビットを表現するが,量子コンピュータにおいては,0と1のビットを量子的に重ね合わせた「キュービット」が計算に用いられる.量子コンピュータが得意とする計算に,素因数分解がある.現在使われている公開鍵暗号は,通常のコンピュータが解こうとすると天文学的な時間を要する素因数分解の困難さに基づいている.しかし,量子コンピュータが実現するとこのような問題が瞬時に解かれてしまうため,現在の暗号は陳腐化してしまうと考えられている.量子コンピュータ実現のためには,キュービットを何らかの物理現象として実現することが大きな課題となっている.[熊谷敦也]
■リレーションシップ・インベストメント(relationship investment)りれしよんし
一般に経営者との対話を重視し,コーポレート・ガバナンスに関与しながら投資価値を高める投資手法を意味する.1980年代後半にアメリカの公務員年金を中心とする機関投資家が株主提案権を行使してコーポレート・ガバナンスに関与し,1990年代には経営者が積極的に機関投資家との対話に応じるようになってきた.このような投資手法をとる機関投資家としてアメリカの公務員年金基金のCalPERSが有名である.
CalPERSは同業他社と比べて株価が長期的に低迷している企業に対象を絞り,まず非執行役員との会合をもつ.そこでは取締役会の構成員の問題,役員報酬の問題,株主の意見を反映させる株主諮問委員会の創設,非執行役員,社外取締役の監視の強化などが議論される.このように会社と長期的関係を築き,長期的投資利益を高める投資手法をリレーションシップ・インベストメントとよぶ.
リレーションシップ・インベストメント手法を採用するミューチュアル・ファンドも登場している.このようなファンドは,まず株価が低迷している会社株式を保有し,取締役会に働きかけることにより,株主価値を最大化する投資手法をとっている.→株主提案権,CalPERS,機関投資家,コーポレート・ガバナンス[三和裕美子]
■リーン生産方式(lean production)
ぜい肉をそぎ落とした生産システムを意味する.これは,徹底的な無駄の排除を追求する「トヨタ生産方式」から,普遍的な要素を抽出して形づくられた概念である.この生産方式が広く知られるようになったのは,1990年,マサチューセッツ工科大学(MIT)の技術・政策・産業開発センターにおけるプロジェクト「国際自動車研究プログラム(IMVP)」の成果が,The
Machine That Changed the World(沢田博訳『リーン生産方式が,世界の自動車産業をこう変える』1990年)として出版され,各国で翻訳されたことによる.
同書では,リーンな生産は,手づくり生産のコスト高と大量生産の融通性の欠如という問題点を克服する新たな生産方式と位置付けられており,リーンな生産の導入は,消費者の行動,仕事の性格,企業の運命,さらには国家の運命をもかえる公算が高いと述べられている.
同書が,日本製品の競争力基盤がトヨタ生産方式とその普及にあることを指摘したことから,トヨタ生産方式は世界中に広く波及しはじめることになった.
ただし,トヨタ生産方式が大量生産方式を超える新たな生産方式であるかどうかについては,異論が存在する.→トヨタ生産方式,ボルボ生産方式[那須野公人]
■倫理オフィス(ethics office)りんせいさん
企業倫理の問題について専門に扱うために置かれた企業内の部門のこと.企業内倫理教育,倫理相談,倫理綱領の遵守状況の点検などがその主な職務となる.この部門の長が倫理オフィサー(ethics
officers)となり,アメリカにおいては,1992年にEOA (企業倫理担当者協議会:Ethics
Officers Association) も設立されている.日本においては,倫理オフィスのような,企業倫理の問題のみを日常的に担当する部門を設置している企業は,まだ,少数派であり,法務部門,コンプライアンス部門などが担当していることが多い.また,問題行動が発覚したさいに,倫理委員会を設置した企業も少なくない.→企業倫理の制度化,コンプライアンス,倫理綱領[出見世信之]
■倫理ギャップ
国際化が進展するにつれて,国ごとの企業倫理の対応に大きな違いがみられることをいう.企業倫理の分野においては,海外腐敗行為防止法や連邦量刑ガイドラインなどの企業倫理を促すような規制や支援の存在から,アメリカが研究,実践の両領域において先行している.企業倫理の対応に関してアメリカに次ぐのが,ヨーロッパ諸国である.日本は,不正競争防止法の改正が欧米諸国よりも遅れアジア諸国については,その対応が遅れているといわれている.賄賂などの問題については,こうした倫理ギャップを埋めるべく,国際連合やOECDのような国際機関において,対応が進められている.→企業倫理,連邦量刑ガイドライン[出見世信之]
■倫理綱領
日本においては,社是・社訓と同義のものとして捉えられることも多い.それは,倫理綱領が,個々の企業にとって重要な価値理念や理害関係者との関係について示したものだからである.しかしながら,企業倫理の制度化において,倫理綱領は,単に経営理念を示すだけでなく,倫理法令遵守の基本方針を具体化したものとして,捉えられることになり,倫理綱領に基づいた倫理教育が展開されることになる.そのため,倫理綱領は,社是・社訓よりも倫理問題に直面した際の判断基準となるような,具体的内容を伴っている必要がある.→企業倫理の制度化[出見世信之]
■倫理的課題事項 (ethical issues)
倫理的課題事項は,それを問題(problem)として顕在化させないために示されるものであり,課題事項管理が求められるものである.倫理的課題事項という場合には,違法行為ではないが,第三者的な視点からみて問題となり得るものをさす.倫理的課題事項は,企業の利害関係者ごとに整理することができる.たとえば,競争会社との間には,公正の実現が求められることになるが,入札談合や不当廉売などの課題事項が存在し,消費者との間には,誠実であることが求められることになるが,欠陥商品や虚偽広告などの課題事項がある.
投資家との間には,公平が求められ,内部者取引,粉飾決算などの課題事項があり,従業員との間には,尊厳が求められ,過労死,雇用差別などの課題事項がある.倫理的課題事項は,社会の倫理状況,法律などによって変化し,企業はある課題事項が問題として顕在化しないよう,対応することが求められることになる.たとえば,高度成長期においては,公害問題への対応が求められたが,環境基本法などの整備もあり,現在は,地球環境問題への対応が求められている.→企業倫理,利害関係者[出見世信之]
■倫理ヘルプライン(ethics help line)りんりへるふ
企業の内部で倫理問題に直面した従業員が,いつでも倫理オフィス(ethics office),倫理オフィサー(ethics
officers)などに相談できるようにしたもの.電話,ファックス,メールなどを利用する方法があるが,相談者が不利益をこうむらないよう,相談者のプライバシーが守られることを前提としている.倫理ヘルプラインがうまく機能し,相談事項について必要な対応がとられるならば,内部告発を事前に吸収することができ,それが外部への告発となって表面化する前に問題を解決することができる.そのためには,倫理オフィスの独立性を高め,問題解決に必要な権限を付与することが重要となる.→倫理オフィス[出見世信之]
る
■ルクセンブルクの妥協(Luxembourg Compromise)るくせんふる
ハルシュタインEEC委員長が1965年3月,EECの閣僚理事会に提出したEEC自主財源の確保,欧州議会の予算権限の強化,条約に基づく閣僚理事会の加重特定多数決制の大幅拡大を求めた包括提案に対して,強力な国家主義者ド・ゴール仏大統領はEEC委員会と欧州議会があまりにも連邦主義的,超国家主義的な性格を強めるとして,この提案に強硬に反対した.自国の主張が通らないとみたフランスは1965年7月,「ハルシュタイン・プラン」によって国家主権が侵犯されるという理由から,欧州司法裁判所を除くすべてのEEC諸機関のいっさいの会議をボイコットし(いわゆる「空席政策」),フランス常駐代表をブリュッセルから引き上げてしまった.フランスのボイコットによって,EECは崩壊の危機に直面したが,1966年1月,ルクセンブルク閣僚理事会でフランスと他のEEC5カ国との間で妥協が成立した.その結果,条約の規定にもかかわらず,EC加盟各国の死活的な国益に関する問題については,「閣僚理事会は全会一致に到達するよう努力しなければならない」という意思決定方式が慣習上定着し,欧州統合が沈滞する重要な原因のひとつとなった.→EU閣僚理事会,欧州議会,欧州司法裁判所,欧州統合[田中友義]
■ルース・カプリング・モデル(loose coupling model)るすかふりん
ルース・カプリングとは,組織の緩やかな結合状態を示す言葉で,ルース・カプリング・モデルとはシステムを構成する独立性をもったサブシステム間の結合が緩やかであることを示すモデルである.つまり,現実には目的と手段はほとんど関係がなく,公式に定めた組織構造にしたがって組織は動かず,また特定組織の下位単位とプログラムの結びつきは希薄であるという組織の概念として理解することができる.官僚制組織に代表される合理的組織では,組織はタイト・カプリング(tight
coupling)されるとことが前提とされてきた.この考え方とは対照的に展開された組織観がルース・カプリングであり,独立した要素間の緩やかな結合により,障害を局部化して最小限にくい止めることができ,また柔軟に適応することができるとされている.
ワイク(K. E. Weick)は,組織の多義性をもち,組織の構成単位がルースに結びついたルース・カプリングとして組織化の理論を展開している.また,マーチ&オールセン(J.
G. March & J. P. Olsen)の曖昧性を容認した組織選択の「ゴミ箱モデル(garbage
can model)」もこのルース・カプリングの概念を踏襲しているといえる.→組織変革[高橋正泰]
れ
■レヴィン(Lewin, Kurt, 1890〜1947)
レヴィンは,ゲシュタルト心理学派の心理学者として情動や動機研究で業績を収めると共に,集団力学(Group
Dynamics)研究の創始者であり,リーダーシップ研究や社会心理学研究の発展に大きく寄与した.集団力学とは,小集団実験の手法を用いて,人間の集団生活を規定する諸要因の特質や諸現象を明らかにしようとする研究領域である.彼は小集団実験から,個人に還元できない集団独特の現象の存在を示し,こうした現象を説明する理論として,「場の理論(field
theory)」を提示した.社会的な「場」とは,社会現象に観察されるさまざまな事実を説明するための媒介変数の力の分布状態のことをさし,社会現象とは,こうした社会的な場における諸力が一定領域内における均衡を示している状態であり,「準定常的均衡」とよばれる.さらに彼は,人間行動(B)は,人間特性(P)と環境変数(E)との関数であり,B=f(P,E)で説明されるとした.また,彼は1945年にはMITに集団力学研究センター(Research
Center for Group Dynamics)を創設した.[山中伸彦]
■レスリスバーガー(Roethlisberger, Fritz Jules, 1898〜1974)
レスリスバーガーは,アメリカの産業社会学者であり,メイヨー(G. E. Mayo)とともに,人間関係論の展開に大きく寄与した.人間関係論の端緒は,1924〜1932年にわたってウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場(Hawthorne
plant)で行われた一連の調査実験,いわゆる「ホーソン実験」に求められる.彼はメイヨーと共に,1927年から実験終了の1932年まで約6年間,実験に参加した.ホーソン実験の研究結果は,ディクソン(W.
J. Dickson)と共同の包括的な報告書Management and Worker,
1939に●められた.その後,彼はManagement and Morale,
1941.(野田一夫・河村欣也共訳『経営と勤労意欲』ダイヤモンド社,1954年)を著し,本研究において人間関係論の中心的な議論を展開した.労働者は,テイラーに代表される伝統的(古典的)管理論において前提されているような個人主義的に経済合理性のみを追求する「経済人」ではないし,生理的・物質的環境条件や経済的インセンティブに対して機械的に反応する「生理的機械」ではない.むしろ個人的経験や職場の社会的組織や社会的価値のなかで「社会化」の過程,すなわち「人間関係」を通して内面化された「感情の体系」を有する「社会人」である.経営組織には,「能率の論理」を基準とする「公式組織」だけではなく,「感情の論理」を基準とする「非公式組織」が存在し,労働者の作業能率,モラールは,こうした「能率の論理」と「感情の論理」の均衡が維持されるときに高まるのである.[山中伸彦]
■レバレッジ(leverage)
レバレッジは,「テコの原理」を意味する.それは,小さな力で大きな力を得ることである.レバレッジには大別して2つある.会社は自己資本だけで大きな利益を獲得するには限界がある.しかし,社債の発行,金融機関からの借入金などによって手元資金を増大させ,利益を生み出すことができる事業に投資することで,自己資本のみの場合よりも利益を拡大することが可能となる.このことによって,株主資本利益率(ROE)や1株当たりの利益などの指標を上昇させることができる.ただし,あまりにも借入金を増大させると,他人資本が増加し,総資本利益率(ROA)などの指標を逆に悪化させてしまうこともある.これは,財務レバレッジという.他に業務レバレッジがある.[森谷智子]
■連結財務諸表((英)consolidated accounts, consolidated
financial statements)れんけつさい
支配従属関係にある企業集団を単一の組織体とみなして作成する財務諸表であり,親会社が企業集団の財政状態および経営成績を総合的に報告するために作成するものである.連結財務諸表は,法的に独立した企業が個々に作成する個別財務諸表をもとにして作成され,連結貸借対照表,連結損益計算書,連結剰余金計算書および連結キャッシュ・フロー計算書から構成される.
わが国ではこれまで個別情報を中心とするディスクロージャーが行われてきた.しかし,企業の多角化や国際化あるいは持株会社の解禁等を背景として,連結情報に対するニーズが高まった.そこで,企業会計審議会は1997年6月に「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」を公表し,連結情報を中心としたディスクロージャー制度への転換を図った.同時に,連結財務諸表の作成に関して,@連結対象となる子会社の判断基準として支配力基準を導入した,(2)持分法の適用対象となる関連会社の判断基準として影響力基準を導入した,(3)子会社の資産および負債の評価に時価会計(部分時価評価法と全面時価評価法)を導入した,(4)税効果会計を導入したなど,連結情報を充実するための改善も行われている.→キャッシュ・フロー計算書,時価会計[大野智弘]
■連結納税制度(consolidated tax payment system)れんけつのう
連結納税制度は,従来,会社ごとに個別に計算していた法人税の計算を企業グループ全体で一体として一括計算するやり方で,親会社とすべての100%子会社を適用の対象としている.2002年7月に公布された「法人税法等の一部を改正する法律」において創設され,2003年3月31日以後に終了する事業年度からこの制度は適用された.たとえば,グループ内に赤字会社と黒字会社が混在している場合には,その赤字と黒字が相殺されグループ全体として法人税額が少なくなるという効果がある.また,この制度は任意の届出制であり,連結納税制度を選択するか否かは法人の選択に任されているが,一度この制度を選択すると自由に取り消すことはできない.すでに導入済みである連結決算制度と一体となって,その有効性が機能する.[三浦后美]
■連邦量刑ガイドライン
1991年,ホワイトカラーの犯罪を対象とする裁判に関して罰金を決めるさいの指針として,アメリカ連邦量刑委員会が公表したもの.具体的には,企業の規模,経営者の違法行為に対する考慮,違法行為に対する予防プログラムの存在,当局に対する態度,過去の歴史について点数をつけ,その点数性により罰金に差が出るというものである.たとえば,企業が過去に同様の犯罪を起こしながら,何ら予防策をとっていない場合には,はじめて罪を犯してしまった場合と比べて,同じ犯罪であったとしても重い罰金が科されるのである.
具体的な予防プログラムとしては,不正防止の基準や手続きの明確化,法令遵守担当の責任者の任命,不正を発見するための監視制度などであり,企業倫理の制度化とほぼ同じ内容である.企業が企業倫理の制度化に積極的に取り組んでいるかどうかにより,罰金に差が出ることから,アメリカにおいては,この連邦量刑ガイドラインが企業倫理の制度化を促しているともいわれている.→企業倫理の制度化[出見世信之]
ろ
■ロイヤルティ(royalty)
ライセンス契約に基づき,特許権や特殊なノウハウを所有しているものに,それらの使用にさいして支払われる料金のこと.ブランドの使用権や経営の指導権が契約に含まれる場合もある.
ライセンス契約では,通常一定の指導期間が明示され,使用料は当初に一括払いかあるいは売上の一定率払いないし均等払いで支払われる.ただし,見返り購買取引や買い戻し取引の場合,ロイヤルティの支払いはライセンシー(ライセンスの実施権者)からライセンサー(ライセンスの許諾者)に対して割引上の商品で行われる.→ライセンシング[鈴木岩行]
■労働者協同組合(workers' cooperative/workers' collective)
協同組合の一形態であるが,そこで働く労働者が出資して所有者となり,同時に経営管理の責任を担うところに大きな特徴がみられる.したがって,一種の労働者自主管理企業という性格も帯びている.スペイン北部の町モンドラゴンにある「モンドラゴン協同組合グループ」は労働者協同組合の代表的事例である.それは金属機械など生産協同組合形式の製造工場群を中核にして,生産農協組織,協同組合銀行,共済組合,生活協同組合チェーンなどによって構成される.そこでは労働者協同組合員が出資者であると同時に,経営参加者と労働者としての役割を担う.日本では,中高年雇用・福祉事業団が代表的な労働者協同組合といわれる.→NPO,協同組合,消費生活協同組合[井上照幸]
■労働の人間化(humanization of work)
ヨーロッパで用いられる「労働(生活)の人間化」や,アメリカで使用されている「労働生活の質的向上」
(QWL) などを総称する概念.一般に「労働の人間化」は,広義には,作業環境の改善や労働条件の向上など労働生活全般にわたる質の向上を意味するのに対し,狭義には,機械化や分業の進展に伴って生じる「労働の非人間化」を克服することで「生産性の向上」を図るための新たな作業組織を意味している.その具体的な形態には,@従業員の計画的な異動を行うジョブローテーション,(2)作業の流れに沿って労働者の担当する職務の数を増やす職務拡大,(3)仕事の計画的な面を職務に含め,労働者の担当する職務に自立性と責任を与える職務充実,そして,(4)自己完結的な作業を小集団で担当し,そのさい作業計画や手順などを自立的に決定するとともに,その結果に集団が責任を有するという自律的作業集団があげられる.このように,狭義の「労働の人間化」なるものは,職務の拡大や職場での参加を実現することで,単調で,細分化された作業を組織の次元で克服し,生産性の向上に寄与しようというものである.→職務再設計[平●克彦]
■労務費 (labor cost)
労務費は労働用役の消費によって発生する原価である.労務費は形態別に賃金,給料,雑給,従業員賞与手当て,法定福利費等に分類され,これを基礎に直接費と間接費に分類される.作業員の提供する労働力の一部(直接工の直接作業時間に対する賃金)は直接労務費に,その他一部(直接工の間接作業時間に対する賃金部分)は間接労務費となる.
原価計算上,労務費は賃金の支払高ではなく,賃率に直接作業時間をかけた賃金消費高となるが,その関係は以下のように示される.
賃金消費高=当月支払高−前月未払高
+当月未払高[古庄 修]
■ローカル・コンテント(local content)ろましようや
海外進出した企業が生産のために調達する原材料,中間部品等のうち進出先の国産品で調達する比率のことをいう.
現地生産は現地経済の発展,地場産業の育成,雇用機会の創出,貿易収支の不均衡の是正,水平・垂直分業の促進などの利点があるが,一方で地場産業の衰退,崩壊,外国企業による市場支配など,当事国の経済にマイナス面で影響を与えることもある.そこで発展途上国だけでなく,先進国でもローカル・コンテントを適用している国がある.しかし,こうした措置は貿易を規制し,ゆがめることにもなるので,WTOでは貿易関連投資措置(TRIM)として禁止することで合意している.→WTO,TRIM[鈴木岩行]
■ローマ条約→マーストリヒト条約ローレンス&ローシュ(Laurence, Paul
O.R., 1922〜/Lorsch, Jay W., 1932〜)ろれんすろし
アメリカの組織論,コンティンジェンシー論者.主な著作にOrganization
and Environment,1967.(吉田博訳『組織の条件適応理論』産業能率短期大学出版部,1977年)がある.彼らは環境によって適切な組織は異なるという立場から,環境と組織の関係について実証分析を行い,不確実性が高い環境にある組織は分化の程度が高く,分化した部門を統合するための組織機構が複雑である一方,安定的な環境にある組織は分化の程度が低く,統合のための組織機構は単純な官僚制機構を採用していると説明する.彼らの研究などにより,70年代以降,コンティンジェンシー論が大きな地位を得るに至った.[安田賢憲]
■ロワー・マネジメント(lower management)ろわまねしめ
経営階層の中で最下層にあって,上司から与えられた目標に対し,現業部門の日常業務の中で,従業員を直接管理・評価するのがロワー・マネジメント(現場管理者,現場監督者)である.意思決定の特徴は,反復的で定型的な部分も多く,その範囲も社内的なものにとどまる.→トップ・マネジメント,ミドル・マネジメント[秋野晶二] |
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