増補版 現代経営用語の基礎知識
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な 行



■内国民待遇(national treatment)ないこくみん 
外国人や輸入品に対して,自国民よりも不利でない待遇を与えることをいう.自国民待遇ともいう.原則として相互主義に基づき,日米友好通商航海条約などの多くの2国間条約に税金,契約,財産権,営利活動などについて,外国人を自国民と差別せず,自国民と同様か,それ以上有利な待遇を与える内国民待遇条項が規定されている.
 また,GATT第3条規定は,輸入品に対して内国税や国内規則が,何らかの方法によって国内生産に保護を与えるために同種の国内品に適用される待遇より不利に取り扱ってはならないとして,輸入品と国内品の差別待遇を禁止している.
 WTO協定は,同種の産品,サービス,知的所有権(TRIP)について一部の例外を除いて内国民待遇の原則を締約国に義務づけている.→最恵国待遇,WTO[田中友義]

■内部請負制(inside contract system/inside contracting) 
工場経営の初期に,イギリス,アメリカ,日本等各国でみられた過渡的な管理形態.産業革命後も,機械工業をはじめイギリス紡績業においてさえ,熟練は完全には解体されずに残された.これらの工場においては,管理方法の未成熟という状況のもとで,管理者の不足を補うとともに,管理上の危険負担をさけるため,経営者が熟練工に請負契約によって管理を一任することが多かった.熟練工は,自らの裁量で何人かの不熟練工を雇用して作業を遂行したことから,これは「二重雇用制」ともいわれる.熟練工は,報酬を出来高に応じて受け取ったが,自らが雇用した不熟練工に対しては時間給で支払ったことから,生産性の上昇は熟練工の取り分の増大につながった.[那須野公人]

■内部化理論(internalization theory) 
国境を越えた取引における取引コスト節約の可能性から多国籍化が進展することを説明する理論.取引コストとは情報収集,取引契約の実行の確認,危険負担などに伴う費用などのこと.
 一般に企業は市場に任せるよりも,@原材料や情報など安価で安定的に入手できる,(2)取引ごとの交渉や遂行にかかわる費用を低めることができる,(3)政府の規制を緩和することができる,(4)課税や関税面で有利になる,といった場合に企業内で取引を行おうとする.さらに,取引が国際化したとき,内部市場を創設し,国際的な外部市場取引を単一の単位のもとで統制した方が,競合企業よりも取引コストを低減することができる場合,企業は海外直接投資を行う.
 内部化理論は1970年代後半以降,バックレー(P. Buckley)やカソン(M. Casson),ダニング(J. H. Dunning),ラグマン(R. Rugman)ら,いわゆるレディング大学を研究の中心とするレディング学派とよばれる研究者がその理論の精緻化を推し進めている.→寡占的優位理論,経営資源移動理論,多国籍化過程[安田賢憲]

■内部通報制度ないふつうほ 
内部通報制度とは,企業や行政組織等における不正を内部窓口に通報することを目的としたルートを指すが,それのみならず通報者のプライバシー保護や報復禁止措置などを含めた包括的な制度設計を含んだものをいう.不祥事の発生を未然に予防するとともに,万一,不祥事が発生した際にも被害を最小限に止めることを目的とした経営倫理の制度化策のひとつである.かりに組織内部に通報制度がない場合,外部の監督官庁・マスコミ等に直接告発される可能性が高くなるともいわれる.具体的な通報内容としては,利益相反問題,社員の資産横領・贈収賄,セクシャル・ハラスメント,差別問題などが多い.
 なお,「内部通報」と「内部告発」の用語としての区別については,内部告発がマスコミや監督官庁等の外部機関への通報を指すのに対し,内部通報は組織内の所定の窓口への通報を意味するとされる.一方,英語のホイッスル・ブローイング(whistle blowing)は,外部への告発を含むものとして理解されることが多い.
 また,内部通報制度は,ヘルプラインやホットラインといった概念を包含したものとして位置づけられており,たとえば,2002年10月に日本経団連は不祥事再発防止対策の一環として,会員企業に「企業倫理ヘルプライン」の設置を呼びかけた.また,NGOの株主オンブズマンは,2002年10月に「公益通報(内部告発)支援センター」を設けた.他方,国家的なレベルでは,わが国でも2004年6月に「公益通報者保護法」が成立し,企業や行政が内部告発の受理・調査体制を整えるのを待って,2006年春までに施行される予定である.イギリスでは1998年に「公益開示法」(Public Interest Disclosure Act),アメリカでは1989年に「内部通報者保護法」(Whistleblower Protection Act)として,すでに成立している.→株主オンブズマン,企業倫理の制度化,倫理オフィス,倫理綱領,倫理ヘルプライン[田中信弘]

■内部統制(internal control)ないふとうせ 
外部統制とは区別され,組織体が自発的に構築する統制システムをいう.初期的な議論としては,内部監査として経営学や管理会計の領域で行われていたが,現在では主として会計監査の領域で活発に議論されるようになった.その場合,不正な財務報告の防止を主眼とする意味合いのみならず,より広い範囲の内容を網羅するものになっている.内部統制のモデルとして有名なCOSOモデルによれば,内部統制の目的として,@事業経営の有効性・効率性を高め,(2)財務報告の信頼性を確保し,(3)関連法規の遵守を促す,があげられている.経営者はそれらの目的を達成するための仕組みを構築し,その責任を負う必要がある.
 また,内部統制を構成する要素としては,一般に,@「統制環境」(経営理念や基本方針,取締役会や監査役の監視機能,社風や慣行などからなる),(2)企業目的に影響を与える「リスクの評価」,(3)「統制活動」(権限や職責の付与,職務の分掌などを含む),(4)「情報と伝達」,(5)「監視活動」の5つがあげられる.これらの要素が経営管理の仕組みに組み込まれて一体となって機能することで,上記の目的が達成されることになる.
 一方,内部統制の限界ということにも配慮する必要があり,内部統制はそれが目的とするものを支援するに過ぎず,保証するものではない.これまで日本において内部統制についての議論は必ずしも活発とはいえない面もあったが,コーポレート・ガバナンスの今日的議論とあわせて企業への監視体制を考える視点が有用となる.また,アメリカの「企業改革法」(サーベンス・オクスレー法)では,財務報告にかかわる内部統制として,財務情報の作成過程で不正や間違いが起こらないよう社内の仕組みを早期に確立することが求められている.→企業改革法,コーポレート・ガバナンス[田中信弘]

■内部労働市場(internal labor market) 
労働力の需給関係が,大量生産方式を基盤とするOJTや昇進制度を基軸に,ある程度,大企業内部で調整できるような仕組み.
 一般に労働市場は,労働力商品をめぐる需要と供給との競争関係を通じて,労働力の価格=賃金を決定するとともに,労働力の職業・産業への配分・再配分を行うメカニズムを意味している.このような労働市場の構造は,資本蓄積に伴う生産力構造の革新と,労働力の需要構造の変化を通じて変化していくが,なかでも重要なのが大量生産方式の導入である.大量生産のもとでは,これまで職業別組合によって維持されてきた職種 (trade) は,一定の管理技法に基づいて決められた,相互に関連する多くの職務 (job) に分解されるとともに,このような職務は階層的に編成され,そこに昇進ルートが形成されることになる.
 こうした状況のもとで労働者は,学校卒業後,比較的簡単な職務に配置され,作業指導票をもとにOJTなどを通じて技能を向上しながら,よりむずかしい職務に昇進していくことになる.昇進ルートに基づいて形成される技能は,企業に特殊な性格を有するものになる.このようにして,大量生産方式を背景に,外部の労働市場から採用された労働者が,企業内昇進制度とOJTを通じて技能を形成し,上位の職務に昇進することで企業の労働力需要を調整できるようになった状況を内部労働市場という.このような内部労働市場では,企業に固有の技能をもつ労働者の移動費が減少することから,経営者により選好されるものと考えられている.→OJT/Off-JT[平●克彦]

■ナスダック市場 
NASD(National Association of Securities Dealers:全米証券業協会)によって1971年に創設された店頭登録市場.設立当時は,市場と証券会社をコンピュータ・ネットワークで結ぶ画期的な証券市場システムの導入が注目された.ニューヨーク証券取引所と比較して,赤字企業でも上場が可能になるなど株式登録の基準が緩やかに設定されている.このため,多くのベンチャー企業にとって,重要な資金調達の場として活用されている.
 現在,ハイテク産業を中心に5,000社を超える成長企業が登録・株式公開している.登録銘柄すべての株価から計算されるナスダック総合指数は,登録比率の高いハイテク株の値動きに連動し,世界中の株式市場に大きな影響を与える.ニューヨーク証券取引所のダウ工業平均株価と並び,ナスダック総合指数は株式市場の動向をあらわす指標として重要な役割をもっている.→店頭登録市場,ナスダック・ジャパン[川名和美]

■ナスダック・ジャパン(NASDAQ JAPAN) 
大阪証券取引所と全米証券業協会 (NASD)・ソフトバンク連合の合弁で,2000年6月に発足,大阪証券取引所内に開設されたベンチャー企業向けの店頭登録市場.ナスダック・ジャパンの上場基準は2つあり,一般向けの「スタンダード基準」とベンチャー向けの「グロース基準」に分かれる.グロースではスタンダードよりも財務基準が緩やかになっており,インターネット関連企業などの参加が多い.ナスダックの特徴は,アメリカやヨーロッパの各ナスダック市場との相互上場であり,日本企業の株式だけでなく,アメリカのナスダック株式の売買が可能.また,ナスダック・ジャパン上場銘柄もアメリカのナスダックに上場できる.→大証ヘラクレス,東証マザーズ,ナスダック市場[川名和美]

■ナノ・テクノロジー(nano-technology)なのてくのろ 
ナノとは,10億分の1を意味し,1nm(ナノメートル)とは,10億分の1メートルを意味する.ナノ・テクノロジーとは,原子や分子といった,ナノメートルのスケールで物質を制御することで,新しい材料や機能を創成する技術を指す.ナノ・テクノロジーの発端は,1959年,物理学者リチャード・ファインマン(Richard Feynman)が講演の中で提唱した概念にさかのぼる.ナノ・テクノロジーは,物理学,化学,生物学,電子工学,医学,等の多様な研究分野と隣接する,極めて学際的な研究領域である.またその応用も多岐にわたり,ビジネスへ与える影響も計り知れない.現在,ナノ・テクノロジーを代表する素材としては,60個の炭素原子がサッカーボール状に結合した構造をもつフラーレンや,平面的なグラファイト分子を丸めて細長い円柱状にした構造をもつカーボン・ナノチューブがある.カーボン・ナノチューブは,素材としての多くの際立った特性から,とくに大きな注目を集めている物質である.その特性とは,アルミニウムの半分程度という軽さながら鋼鉄の数十倍の強度をもつ,銅よりも電気伝導性が高い,ダイヤモンドよりも熱伝導性が高い,化学的に安定性が高い,などである.
 これらの炭素原子からなる物質以外にも,ナノ・テクノロジーが対象とする物質にはさまざまなものがあり,その一部はすでに日常生活に浸透しつつある.身近なところでは,汚れにくい衣服や,二酸化チタンの微粒子を配合した化粧品などがある.エレクトロニクスの分野では,DNAにおける塩基配列を利用して計算を行うDNAコンピュータが研究されている.また,医療の分野においては,がん細胞だけを狙い撃ちする薬が研究されている.一方で,ナノメートル規模というきわめて微細な粒子(ナノ粒子)が人体に取り入れられることによる健康への悪影響を示唆する研究結果も報告されており,今後安全性の本格的な評価を行うことも課題となっている.[熊谷敦也]

■ナレッジ・マネジメント(knowledge management)なれつしまね 
野中郁次郎は経営学の立場から組織の知識創造理論を構築した先駆者である.彼によると,ナレッジ・マネジメントは言語可能な形式知と相対的に言語化が困難な暗黙知(野中は好んで身体知ともよぶ)の組合せで組織内に知識を創世する過程である.具体的には,共同化(Socialization),表出化(Externalization),連結化(Combination),内面化(Internalization)の4つの過程があり,形式知を行動,実践のレベルで伝達し,新たな暗黙知として学習していく過程がナレッジ・マネジメントの全行程である.4つの過程の頭文字をとって,SECIモデルとよぶ.共同化は身体,五感を駆使し,直接経験を通じた暗黙知の共有と創出の過程である.身体知の名称もここから来る.表出化は対話や思索による概念やデザインを創造する過程である.これによって,個に蓄えられていた暗黙知が形式知になり,集団で共有できるようになる.連結化は形式知の組合せによる新たな知識の創造の過程である.ITを最大限に活用できる過程である.これによって,知識は集団や組織を超えて広く普及し,共有できるようになる.内面化は形式知を行動,実践のレベルで伝達し,新たな暗黙知として理解し,学習する過程である.この過程では,シミュレーションや実験という方法も有効である.暗黙知と形式知の絶え間ないスパイラルの中で知識は生み出され,洗練されていく.彼は,SECIモデルは真空の中で行われるのではなくて,特定の時間,空間,人間の文脈の中で行われるものである.それには支援する場が必要である,と諭じている.最近では,このような背景が捨象され,知識を重要な経営資源のひとつとして,その獲得,蓄積,創造,活用などを通して個人のもつ知識やノウハウを組織全体で有効に活用する経営の理論や実践手法のことを指す場合も多い.→知識創造[市田陽児]




■二重構造論にしゆうこう 
二重構造論という考え方は,有●広巳によって最初に唱えられたものであり,有●が主査となって執筆した1957年の『経済白書』によって,一般化した.同白書によるならば,わが国のうちには「先進国と後進国の二重構造」が存在し,この「二重構造」を「経済の近代化と成長を通じて解消する」ことが課題であるとしている.そして,こうした「二重構造」の遅れの基本的要因が低賃金労働力にあるとし,それは大企業と中小企業との賃金格差として実際にあらわれるという.二重構造論は,中小企業の問題性を指摘し,その課題を示したものであり,高度成長期以降のわが国における中小企業政策に関する基本的な考え方になった.
 中小企業研究における二重構造論は,遅れて発達した日本資本主義の構造的特質による問題性を抱えた存在としての中小企業を大企業との比較のうちに把握した点で,大きな功績があった.しかし,賃金格差の縮小に加えて中堅企業やベンチャービジネスの生成といった中小企業観の多様化により,こうした考え方の影響力は少なくなってきている.
 1963年に制定の旧中小企業基本法では,中小企業政策を実施する上での基本的な考え方は,「二重構造」の解消に置かれていた.しかし,1999年の抜本的改正後においては,多様な中小企業に対する支援となっており,政策面での二重構造論の役割は終了したというのが,政府における考え方となっている.→中小企業基本法,中小企業政策
[和田耕治]

■ニース条約→マーストリヒト条約ニックリッシュ(Nicklish, Heinrich, 1876〜1946) 
ドイツの代表的な経営経済学者.シュマーレンバッハ(E. Schmalenbach)と同様,ドイツ最初の商科大学ライプツィヒ商科大学の第1期生で,ベルリン商科大学教授として活躍した.当初,彼は貸借対照表論上,静態論の立場に立ち,貸借対照表二勘定学説を主張し,経営成果計算や価値創造計算を展開した.しかし,第1次世界大戦後,戦争に負けない,戦争に耐え抜くためのあるべき組織論を展開し,規範科学としての経営経済学を説き始めていった.→シェーンプルーク[菊●研宗]

■ニッチ(niche)につち 
そもそも隙間という意味であるが,経営用語として用いられる場合,他企業,特に大企業がターゲットとしない小さな市場(顧客集団)を意味する.換言すれば,大企業との直接的な競合を避けようとする中小企業やベンチャービジネスが戦略的に狙う小さな市場ということができる.ここでいう小さな市場は2つの意味に大別される.ひとつ目は,特定の産業内において市場規模が相対的に小さいという意味でのニッチである.たとえば,自動車産業全体の市場規模は極めて大きいが,その中で大衆車と比較すると高級スポーツカーの市場規模は小さい.つまり,高級スポーツカー市場はニッチであり,そのような市場を狙う行為はニッチ戦略ということになる.この点に関連して,ポーター(M. E. Porter)は,同業他社よりも狭い顧客層,製品群,地域に経営資源を限定的に投下する戦略を集中戦略とよんでいるが,この集中戦略は,上述のニッチ戦略とほぼ同義として捉えることができる.なお,以上のように,特定産業内において小さい市場を狙う戦略を展開する場合,市場シェアが低くなることは避けられない.
 2つ目は,他の産業と比較して市場規模が相対的に小さいという意味でのニッチである.たとえば,わが国では即席麺の市場は大きいが,即席麺の販売シェアは上位数社によって大半を占められており,したがって,即席麺を製造する機械の市場は小さい(即席麺製造機械を購入する即席麺メーカーが少ない).この場合,即席麺製造機械市場はニッチということになるが,特定産業内での小規模市場を表す上述のニッチとは異なり,産業それ自体の規模が小さいという意味でのニッチである.大企業にとってみればこのようなニッチ市場への参入は魅力が小さいことから,中小企業やベンチャービジネスが同市場において確固たる地位を築こうとすることがある.これもまたニッチ戦略とよぶことができるが,この戦略に成功し,産業規模の小さな市場でシェア1位となった企業のことを,ニッチ・トップシェア企業とよぶ.→集中戦略,ベンチャービジネス,ポーター[関根雅則]

■日本株式会社(Japan, Incorporated)にほんかふし 
1970年頃,アメリカを中心とする欧米で生まれた日本観である.このような見方が生まれた背景には,わが国の当時の輸出攻勢があった.敗戦後わずか10年程で経済復興をなし遂げ,急速に産業構造を高度化させたわが国は,1968年にはGNP世界第3位にのし上がるとともに,その過程で対米輸出を急増させ,1971年には対米貿易黒字が30億ドルを上回るに至った.この要因を,とくにアメリカは,政府と企業との●着ないしは両者の独特な相互作用にあるとみなし,これを「不公正貿易」の要因として非難する意味を込めて「日本株式会社」とよんだのである.→会社主義[那須野公人]

■日本経済団体連合会 
経済団体連合会(経団連)と日本経営者団体連盟(日経連)の統合によって発足した総合経済団体で,略称は日本経団連.大企業と業種別全国団体,地方別経済団体などが会員である.初代会長には奥田碩トヨタ自動車会長が就任した.経済問題全般について財界の意見を集約し,その実現を政界や行政,労組など各方面に強く求める活動をする.
 日本経団連に統合されるまでの経団連は,終戦直後の1946年に日本経済の再建と復興を目的に結成された.「財界の総本山」といわれる力量を誇り,その会長は「財界総理」と称された.一方の日経連は戦後の激しい労働争議に対処するため,業種別・地方別経営者団体を基盤として1948年に結成された.労働問題を専門的に扱い,春季労働交渉など賃金交渉で力量を発揮し「闘う日経連」と称された.経団連と日経連は,大企業主体の財界の意向を国政に反映させるため緊密に連携してきた.
 1990年代になると,経団連は政治献金のあっせん中断などもあって発言力を減退させ,日経連も春闘の沈静化などで役割を大きく減じた.そうした状況下で,社会保障制度改革や教育改革などの課題に経済界をあげて取り組む必要性も増大し,2002年5月に経団連と日経連が統合され日本経団連の発足に至る.なお,他の有力な財界団体としては経済同友会と日本商工会議所がある.[井上照幸]

■日本新事業支援機関協議会(JANBO: Japan Association of New Business incubation Organizations) 
新事業創出促進法の趣旨に基づき1999年に設立された組織で,新事業創出支援事業を行う全国の支援機関や自治体等が地域を越えた交流を図ること,また,類似の活動を行う国際的組織との連携を図ることによって,各地域における新事業創出を促進することを目的とする.地域プラットフォームが設置されている各都道府県等の中核的支援機関(中小企業振興公社等の財団)を中心メンバーとし,経済産業省や都道府県等がオブザーバーとなって構成されている.事業内容は次の通りである.@新事業創出に関する支援事業,技術交流,情報交流または国際交流等についての情報収集,意見交換を促進するための会議等の開催,(2)地域プラットフォーム連携支援ネットワークの整備・運営,(3)新事業創出支援に関する海外機関等との国際交流の推進,(4)新事業創出支援に関する調査・研究および国等が実施する新事業創出支援関連調査等への協力,(5)国および地方自治体による新事業創出に向けた各種支援策に関する情報収集,評価ならびに国および地方自治体への政策提言,(6)その他,上記の目的を達成するために必要な事業.以上であるが,特徴的な活動として,全国にある地域プラットフォームの連携強化とインキュベーターの活性化があげられる.なお,後者に関しては,インキュベーション・マネジャー養成のための研修なども行っている.→インキュベーション・マネジャー,インキュベーター,新事業創出促進法,地域プラットフォーム[関根雅則]

■日本的経営 
終身雇用・年功賃金そして企業別組合は,日本的経営の代表的な特質とされ,これまで日本的経営の「三種の神器」とよばれてきた.このような通説が形成されるきっかけとなったのは,アベグレン(J. C. Abegglen)の『日本の経営』(1958年)の出版であり,この通説は1972年に出版されたOECD(経済協力開発機構)の『OECD対日労働報告書』によって確立されたとされる.
 『日本の経営』の新訂版である『日本の経営から何を学ぶか』(1974年,原著は1973年)の中で,アベグレンは日本的雇用慣行の成長経済下における効用について次のように指摘していた.日本の労働者は公開の市場からではなく,学校から直接会社に入社する.しかも給与が勤務年数の関数であるため,成長企業の労働者の平均年齢は,学校から入る多数の若年労働者の追加によって引き下げられることになる.このように,終身雇用制における採用と給与の制度は,労務費に対するコスト効果から,経済成長を強化する意味で高度に能率的なものである.
 しかし,バブル経済崩壊後の新規採用の縮小・停止によって,企業の年齢構成は急速に高まり,労務費のコスト削減効果は完全に失われてしまった.このような中で,日経連は『新時代の「日本的経営」』(1995年)によって,終身雇用を中核的労働者にしぼるとともに,定期昇給ベース・アップ方式による賃金決定システムの再検討を提起するに至った.
 近年,日本的経営に対する海外の関心は,終身雇用・年功賃金等の雇用慣行から,むしろ生産システム,開発・設計へと移行している.→トヨタ生産方式,リーン生産方式[那須野公人]

■日本版ビッグバン 
時代の要請をうけて日本版ビッグバンつまり金融大改革が銀行,保険,証券の分野で敢行されている.証券の分野では次のような事情である.情報・通信技術や金融技術の革新によって証券市場のグローバル化が進展するという環境の変化にさいして,欧米諸国は果敢に市場改革を推し進め経済のダイナミズムを回復させた.一方,わが国はバブル経済崩壊そして不況の過程を経,そこに既存の金融システムの亀裂を明確にした.にもかかわらず,わが国の証券市場は革新されることなく,それまでは国際金融の大きな役割を担っていたものの,次第にその空洞化が顕著となってきた.
 1996年6月,ようやく証券取引審議会が証券市場に関する総合的な審議を行うために総合部会を設置し,11月には橋本首相(当時)よりFree, Fair, Glovalの理念を掲げた金融システム改革の推進が宣言された.これをうけて,証券取引審議会は,検討を重ね,1997年6月にその最終報告を公表した.そして改革スケジュールに従って,漸次,具体化されてきた.主なところでは,1997年証券総合口座の導入,1998年証券会社の免許制から登録制への移行,投資信託の銀行本体での販売,投資者保護基金の創設,取引所集中義務の撤廃,1999年株式委託手数料の完全自由化,業態別子会社の業務範囲の完全自由化,2002年銀行・証券の共同店舗の解禁などである.→金融改革法,証券市場,証券取引法,投資信託[貞松 茂]

■ニューラル・ネットワーク(neural network)にゆらるねつ 
マイクロプロセッサー・チップはコンピュータの頭脳とよばれるが,膨大な神経細胞の間に複雑なネットワークを形成する人間の頭脳に代替するところまでは到達していない.したがって,能力の高いチップを内蔵するコンピュータでも人間の頭脳が学習するプロセスと同じ方法で学習することはできない.
 ニューラル・ネットワークとは,この人間の神経ネットワークをモデルにしたコンピュータ・システムのことである.従来型のコンピュータに内蔵される,ステップ・バイ・ステップ方式で命令を処理する回路と異なり,ニューラル・ネットワーク・コンピュータには人間の脳の機能に似た並列分散処理を行うことができる回路が内蔵される.視覚センサーを有するコンピュータは,たとえば,Aという文字を人間の脳のパターン認識過程に近づけて認識しようとする.今後,医学,生物学の研究成果を取り込んだニューラル・ネットワーク・コンピュータの開発が一層活発化し,いわゆる「考えるコンピュータ」の利用が容易になれば,さまざまな組織や個人が直面する意思決定局面への応用が期待される.→人工知能[福多裕志]

■人間関係論(human relations)にんけんかん 
1930年代に登場し,とりわけ人間の心理面やその背景にある人間関係に焦点を当てた管理論.人間関係論登場のきっかけは,1924年から32年にわたって,ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場の作業場で実施されたホーソン実験である.もともとこの実験では,作業環境の変化によって作業能率も変化するという仮説のもとに,照明と作業能率の関係が調査された.
 しかし両者の間には明確な関係が認められなかったことから,作業員の心的状態(感情)が能率に影響を与えるという新しい仮説がたてられ,その後の実験で確かめられていった.この新たな仮説に基づくさまざまな経営理論が人間関係論である.人間関係論では,個人の生活や経歴に加えて,職場における交友・対立関係や社会的な慣例・規範が個人の感情に影響を与え,それが作業能率を左右していると考えた.また職場の組織には,単に命令や地位の関係で成り立つ公式組織だけではなく,「おきてと規範」といったそれぞれの職場に固有の非合理的な行動を規定する論理が支配する非公式組織が存在することを明らかにした.[秋野晶二]

■人間モデルにんけんもて 
経営学では,それぞれの理論に基づいてさまざまな人間モデルが展開されている.その代表的な人間モデルとしては,経済人モデル,社会人モデル,欲求充足人モデル,そして経営人モデルをあげることができる.
 @経済人とは,伝統的管理論・組織論が前提とした人間観で,人間は経済的誘因によって,つまり金銭的報酬によって動機づけられるという人間モデルである.(2)社会人とは,人間関係論によって提示された人間観で,人間は社会的存在であって経済的報酬によって動機づけられるのではなく,職場の人間関係という社会的関係の中で動機づけられるとした人間モデルである.(3)欲求充足人とは,人間は欲求をもち,その欲求を満たそうとして行動するという人間観であり,とくにマズロー (A. H. Maslow)の理論にその特徴をみることができる.マズローは人間の欲求を5段階に分け,低次の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとし,次第に高次の欲求を満たそうとする欲求段階論を展開した.ただし,最高次の欲求である自己実現の欲求は他の欲求と異なり,満たされてもその強さは減少せず,増加すると考えられている.マグレガー (D. McGregor)は,マズローの理論の影響をうけて,X理論/Y理論を展開した.低次の欲求をもつ人間観をX理論,高次の欲求をもつ人間観をY理論として,Y理論に基づく管理を提唱した.(4)経営人とは,サイモン(H. A. Simon)が示した人間モデルで,制約された合理性のもとで意思決定し,行動するという人間観である.経済人が完全合理性を前提として最適化基準で意思決定すると仮定されるのとは対照的に,経営人は制約された合理性によって満足化基準に基づいて意思決定し,行動するとされている.つまり,経済学では経済人モデルが採用されるのに対して,経営学ではこの経営人モデルが仮定される.→意思決定,X理論/Y理論,自己実現欲求,制約された合理性,動機づけ・衛生理論[高橋正泰]

■認知的不協和の理論(theory of the cognitive dissonance) 
心理学者のL.フェスティンガー(L. Festinger)は,人間には自分の行動に一貫性を保とうとする強力な力が働くため,そうした力が行動への強い動機づけになることを発見した.それゆえに,人間は自分の認知内容と相容れない事柄に直面する(不協和が発生する)と,その内容の価値を小さく評価する一方,自分の認知を正当化する事柄を大きく評価する.また,そうした不協和に直面することを避けようともする.これが認知的不協和の理論である.たとえばタバコを吸う人は,タバコの害が指摘されるという不協和に直面すると,タバコの害を小さく評価したり,タバコを吸うことで得られる利益(リラックス効果など)を大きく評価したりする.また,●煙家との接触を避けたりして,一貫性を確保し,不協和を低減しようとする.
 マーケティングの分野において,認知的不協和は主に購買後の消費者への企業の働きかけにおいて活用されている.消費者は購買行動の後に,「他の選択肢の方が良かったのではないか」といった不協和に高い確率で直面する.そのため,自分の購買判断の正しさを裏づけるような証拠をメディアや口コミの中から探そうとする.こうした消費者の行動の中で不協和の削減がうまく行われないと,次回の購買意欲が大幅に低下するため,企業は広告などを通じて購買行動を正当化する論拠やイメージを提供することで,不協和の削減を行っている.[木村達也]




■ネガティブ・プレッジ条項(negative pledge)ねかていふふ 
無担保社債の発行会社は,社債権者に対して,彼らの債権の保全上,他の債務のほうが優先的に弁済され,それらの債権者に比し劣後の地位におかれないように,担保にかわる財務上の手当てとして,特約条項(「財務上特約」)を設ける.その中のひとつがネガティブ・プレッジ条項で,一般に担保提供制限条項とよばれている.この条項は,当該社債が平等かつ比例的に担保されない限り,現在および将来発行される他の債券に対して,抵当権その他の担保物権の設定を禁止するものである.具体的には「発行会社は,本社債発行後,他の債務のために担保権を設定する場合には,本社債のためにも同順位の担保権を設定しなければならない」と規定されている.[三浦后美]

■ネッティング決済(netting)ねつていんく 
企業間の取引に際し商品の代金の決済において,個々の取引ごとに決済を行うのではなく,複数の取引の売上高(債権)と支払高(債務)を帳簿上で相互に相殺(差し引き)し,ある期日にその差額だけを受け渡すことにより決済を行うことをいい,相殺決済,差額決済ともいわれる.これは,1998年に外国為替および外国貿易法(新改正外為法)が制定され可能となった.新改正外為法が制定される以前は,輸出代金と輸入代金は別々に為替銀行において管理されており,それぞれ外国為替手数料を別個に総額分支払っており,企業には負担となっていた.しかし,ネッティング決済が可能となったことによって,差し引き分の金額だけの手数料の負担で済み,為替コストの削減や事務の効率化,そして決済資金の準備が軽減されることになった.一方,同法により外貨建ての決済も可能となり,為替リスクの軽減にもつながった.また,ネッティング決済は,2つの企業間同士で行うバイラテラル・ネッティング,3つ以上の企業(多くは企業グループ)で行うマルチラテラル・ネッティングに分類することができる.[林 幸治]

■ネットワーク社会(network society)ねつとわくし 
情報コミュニケーション・ネットワークにより形成される社会.この社会では,通信回線によりいつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになり,欲しい情報やコンテンツを入手できるようになる.今や,ネットワークに接続されるのはパソコンや携帯電話などの通信端末だけではなく,家電やビル,個人宅の管理システムもネットワーク接続され,あらゆる設備がネットワークで接続されることにより,外部からコントロール可能にしている.このように,インターネットを通じてリゾーム(根茎)状のルートのないコミュニケーション・ネットワークがネットワーク社会には形成される.[杉野 周]

■ネットワーク組織 
ネットワークとは,本来,個々の単位が網状に連結されたシステムのことをさすが,近年よく聞かれるネットワーク組織とは,情報技術の進展により可能となった従来のピラミッド型にかわる新しい組織形態をさす概念として用いられている.ネットワーク組織は,内部組織と組織間関係という2つの次元で語ることができる.内部組織のレベルでは,イントラネットなどの情報技術を導入することで,階層構造の簡素化をはかり,意思決定の権限を自立的なチームへと委譲したような組織形態がネットワーク組織のひとつであると考えられる.また,調達,製造,販売といった異なった職能間を情報ネットワークでつなぐことにより,市場ニーズにより迅速に対応していくような組織もネットワーク組織の一形態ということができる.組織間関係のレベルでいうと,特定の機能や能力に特化した複数の組織 (企業) 同士がネットワークを構築することにより,それぞれに特化した技術や知識などを相互に活用していくという形態はネットワーク組織の典型的なものと考えられる.ここで注意すべきは,ネットワーク組織の場合は,系列のように支配・従属関係が成立するわけでもなく,関係が固定的であるわけでもないという点である.あくまでも,個々の組織の自律性を認めつつ,ゆるやかな連結関係が成り立っていることが,ネットワーク組織の特徴である.→系列関係,チーム組織,バーチャル・コーポレーション[青木克生]

■ネットワークの外部性 
外部性とはコストを支払うことなく,他からプラスの影響を受けたりマイナスの影響を受けたりすることを意味する.たとえば,自社の隣に工場が進出してきたことで道路が整備されたらプラス(正)の外部性,逆に工場が公害を発生させたらマイナス(負)の外部性が生じたこととなる.このことから,ネットワークの外部性とは特定のネットワークに参加することから受ける影響ということを意味している.ネットワーク参加者が多ければ,その影響(外部性)も大きい.
 携帯電話に加入するさい,どこでも同じ加入料金であれば,消費者はより多くの人が加入している携帯電話会社を選択するであろう.それは同じコストから生じる利得がネットワークの大小に関係するからである.つまり,ネットワークの外部性とは,多数派に所属することから生じる価値と言い換えることができる.こうしてみると,製品やサービスの価値を決定するのは,品質はもちろんのこと,所属するネットワークの大きさ,すなわち,ネットワークの外部性が重要であることがわかる.インターネットブラウザー,プロバイダー,携帯電話などIT関連の製品やサービスはネットワークの外部性が強く作用しているといえる.→規模の経済[加藤 巌]

■年金基金(pension fund) 
超高齢化社会を迎える21世紀において,年金制度は老後の所得保障を確保するために重要な制度である.わが国の老後の所得保障制度は,公的年金制度,職域(企業)年金制度,個人年金制度の3本柱から成り立っている.わが国においては,政府財政逼迫のために公的年金制度を柱にしつつも私的年金制度への依存度を高める政策が打ち出され,また公・私的年金ともに,昨今の経済状態下で運用利率が予定利率を下回る財政状態が続き,金融資本市場での効率的運用が検討されている.
 従来,受託運用機関に課せられていた5・3・3・2規制に象徴される資産配分規制が1997年に完全撤廃され,今後は株式などのリスク資産運用の比率が増加することが見込まれる.また,公的年金に関してもこれまで積立金は国の資金運用部に預けられ,年金福祉事業団が資金運用部から借り入れて運用されていたが,2001年度からは厚生労働省が直接運用する「自主運用」に切り替えられ株式への投資額も拡大した.日本においても年金基金が機関投資家として証券市場や企業に及ぼす影響が大きくなっている.厚生年金基金連合会や地方公務員共済組合連合会などの機関投資家は,「コーポレート・ガバナンス原則」や「議決権行使ガイドライン」を公表し,積極的に株主議決権を行使している.→CalPERS,機関投資家,厚生年金基金,厚生年金基金連合会,コーポレート・ガバナンス[三和裕美子]

■年俸制ねんほうせい 
従業員の1年間の賃金総額を,前年度の業績や実績などに基づいて決定する賃金形態.年俸制は,バブル経済崩壊後,景気の低迷する中で,主として,比較的業績や成果の把握しやすい管理職や専門職を対象に,職務や成果を処遇に反映し,インセンティブを高めることを課題にしている.一般に年俸制は,職務を基準とした固定的な報酬部分と,担当の職務を通じて達成した業績や成果に応じた報酬部分に分けられるが,業績に応じた報酬部分として,賞与が利用されることが多い.業績の評価にあたっては,目標管理制度がしばしば利用され,全社的な目標を前提に,本人と上司との話し合いに基づいて個人目標を設定し,その達成度に応じて処遇が決定されることになる.[平●克彦]




■農業生産法人 
農業経営を行うために農地の取得を認められた法人のこと.農業関係者が中心となって組織運営され,農地を買ったり借りたりして農業を行う.これまで農業は家族単位での個人経営が主体だったが,法人形態も登場している.農事組合法人,合名会社,合資会社,有限会社,そして2001年からは株式会社形態も認められた.法人化によるメリットには,家計と事業の分離による透明性向上,対取引先・対金融機関の信用力増強といった他産業にも共通のものがある.その一方で農業特有のメリットもある.わが国の農業経営は後継者不足に陥っているが,農業生産法人によって農地を受け継ぐ道が開けた.法人化による農業イメージの向上と大規模農業経営への展望も描かれつつある.[井上照幸]

■ノウハウ(know-how)のうはう 
事業経営にさいして,特定の技術を応用する場合に必要とされる技術的知識や経験.事業を最良に行うための技術・方法・経験・資料など体系的な知識を超えた勘やコツをあらわすノウハウは,企業の生産効率の向上や品質の安定化,他社との製品差別化などにとって重要な競争要因となる.ノウハウは,体系的な知識化がむずかしい勘やコツであるため,一般に社内に秘匿され,企業の無形固定資産を形成する.しかしながらノウハウは,単に自社内で活用されるばかりでなく,特許と同様,ライセンス契約を通して広く外部に移転され,ロイヤルティ収入やライセンス生産など戦略的に活用される.→特許管理[中原秀登]

■能率/有効性(efficiency/effectiveness)のうりつゆう 
能率は,アウトプットの達成に用いるインプットの比率によって測定され,能率的であるとはアウトプットに対するインプットの比率が極小であることを意味する.古典的組織論においてはしばしば能率の追求が志向されてきたが,これは一方で人間性を疎外することも指摘されてきた.他方,有効性は目的を実現する程度により決定され,近代組織論以降においては能率とは区別される.たとえば,企業組織についてみた場合,そこにはさまざまな利害関係者がかかわっていることからその目的は多元的であり,能率的であるからといって有効性が高いとは限らないのである.
 バーナード(C. I. Barnard)は「有効性」と「能率」の2つの基準を組織の存続を可能たらしめる条件として捉えている.バーナードによると,組織の「有効性」とは全体状況の下での目標達成に対する手段の適切さのことをいい,一方,組織の「能率」とは組織活動を引き出すのに十分な個人の動機の満足のことをいう.ここからバーナードのいう組織の「能率」とは,上で示した用語法とは意味を異にすることがわかる.しかしながら,エチオーニ(A. Etzioni)もいうように,組織目的を達成するための主要資源としての個人の満足を高めることは,より多くの貢献意欲を獲得することを可能とし,結果として組織の「能率」を高めることが可能となる.ここから,組織の「能率」が必ずしも人間性と矛盾するわけではないということができる.→近代組織論[青木克生]

■ノンバンク(non-bank) 
預金等を受入れずに与信業務を営む企業.銀行(bank)などの金融機関は,多くの個人や企業からの預金をもとにして融資等の与信業務を営む.ノンバンクは,預金業務を営まずに銀行からの融資などによって資金を調達して,融資や代金立替えなどの与信業務を営む.金融機関は免許制だが,ノンバンクは貸金業規制法に基づく登録によって開業できる.代表的なノンバンクの形態として,個人への少額無担保融資を中心とする消費者金融会社と,企業などへの融資を行う事業金融会社がある.顧客の購入代金の立替え業務を営む通販会社やクレジットカード会社,機械設備や物品などを長期にわたって企業などに貸し出すリース会社も,ノンバンクに含まれる.[井上照幸]


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