立田慶裕編著「読書教育のすすめ」が『全私学新聞』の書評に掲載されました。 - 2024.02.22
戦後日本の女性教員運動と「自立」教育の誕生
奥山えみ子に焦点をあてて
日本の教育学は女性運動の提起に十分に関心を向けてきたといえるだろうか。
女性運動が提起したものを教育運動として理解し、学校教育学の課題として再考する。
戦後の女性教員運動が提起したものは何か。
労働運動としてだけではなく教育学の課題として女性教員運動へ注目することによって、
そこから生み出されてきた新たな教育の模索の過程と成果を明らかにする。
1962 年から82 年まで日教組婦人部長を務め、運動のリーダーであった
奥山えみ子に焦点を当て,論文や発言記、インタビューの記録から調査・考察する。
戦後の女性教員運動の記録を収集し、女性教員たちが訴えていた
問題に対する当時の解決理論と展開された運動について再検討し、その内容と意味を明らかにする。
その際の認識論と方法論についても明確にしていく。
序 章 女性教員運動とは ─本書の意図と方法─
第1節 本書の意図
1.女性教員運動に注目する意味
2.運動の見えにくさ
3.本書の目的と課題
第2節 先行研究の検討
1.女性教員運動とフェミニズム運動
2.教育運動とジェンダー研究
第3節 本研究の方法
1.教育研究への新たなアプローチ
2.教育研究へのフェミニズム・アプローチ
3.奥山えみ子の記述と語りを通した歴史研究
4.国際組織との関係理解
5.本研究の意義
第4節 本書の構成
1.章構成
2.用語の規定と説明
第1章 女性たちの体験と「封建」言説 ─ 1950 年代を中心として─
第1節 女教員会と婦人部との関係
1.婦人部の前身としての女教員会
2.日本教職員組合活動の概観
第2節 奥山えみ子の生い立ちと体験
1.教員運動に接近するまでの体験
2.奥山と婦人部の状況
第3節 報告された問題,示唆された解決の方向
1.「全国婦人教員研究協議会」開催経緯と内容
2.報告された問題とその要因
3.講評が示唆する解決の方向
第4節 参加・発言の機会抑制
1.「全国婦人教員研究協議会」の解消
2.女性枠「3分の1」がもたらしたもの
3.山田清人の指導
4.上原専禄の指導
第5節 国際連携の開始
1.冷戦構造下の国際教員組織
2.婦人部の国際連携
第6節 残された課題
1.「女性の人権」「女性に対する暴力」についての課題
2.アジア・アフリカ(A・A)諸国との女性の連帯
第2章 労働権運動の展開 ─1960・70年代を中心として─
第1節 労働と労働組合に関するこれまでの研究
1.労働とジェンダーに関する研究
2.労働組合とジェンダーに関する研究
第2節 運動の発端
1.奥山えみ子の婦人解放論
2.国内状況
3.「女教師論」の興隆と女性の二重労働
第3節 育児期の労働権の模索
1.育児休暇制度の提起
2.保育所増設か育児休暇制度か
第4節 育児の女性責任から両性責任への過程
1.運動の決定と展開
2.「育児休業法」成立と同時にかかえた課題
第5節 性別役割分業の解消に向けた国際的な動き
1.国際婦人年(1975 年)以降の変化
2.スウェーデン・北欧への注目
第6節 労働政策,家族政策,教育政策の関係
1.家族政策と反論
2.労働権と教育の関係
第3章 「自立」教育の誕生 ─1970・80年代を中心として─
第1節 「女子教育問題」研究の発端
1.女子教育もんだい研究会の誕生
2.「家庭科教育分科会」の行きづまり
3.女性解放論か「性別役割分業解消」か
第2節 「自立」教育の模索
1.「女子教育問題」研究の開始
2.「女子教育問題」研究への反論
3.女性の経済的自立への障害
4.「性の自立」と「自立の柱」の確認
第3節 『季刊 女子教育もんだい』の発行とフェミニズム理論の導入
1.『季刊 女子教育もんだい』の創刊と社会主義女性解放論
2.フェミニズム理論の導入
3.労働組合がもつ男性性
4.編集後記にみる奥山の自覚
第4節 国際的な女子教育への注目
1.国際的・国内的な運動からの刺激
2.国際教職員組織による女子教育への注目
3.国際会議での女性の過少代表性
4.ソビエト・モデルとスウェーデン・モデル
第5節 「自立」教育運動の意味
1.西欧フェミニズムによる「自立」概念の構築
2.「女子教育問題」研究の意味
おわりに:成果と課題