「〈子ども学〉論集」が『日本教育新聞』の書評に掲載されました。 - 2024.04.16
〈社会のセキュリティ〉は何を守るのか
消失する社会/個人
セキュリティを求めるあまり、関係性と結合を喪失し、ダイナミズムや不定形さが取り除かれる時、「社会」は単なる「個人」の寄せ集めとなる。
そこは「社会」の消失地点であると同時に、人びとの個性を類似化し、均質化する「個人」の消失地点ともなる、というのが本書の論点である。
テーマとして、社会の再生産である「生殖」、社会を数量でとらえるという「世論調査」、社会の反映であるという「メディア」や、社会の病理ともいうべき「貧困・犯罪対策」、社会の基礎としての「コミュニティ」や「都市計画」、そして最も根本的な社会の構成要素である「家族」や「ジェンダー」について取り上げる。
1 消失する社会/個人?
2 経済において「消失する社会/個人」
3 国家において「消失する社会/個人」
4 社会保障と社会学―「社会的排除」と「社会的包摂」
5 個人をつなぐ社会のセキュリティ
第1章 生命のセキュリティ―進化論,優生学,エンハンスメント
1 社会と進化
2 優生思想の歴史的展開
3 エンハンスメント(増強)志向
第2章 幸福の指標化と政治―世論に基づく政治から幸福感覚の政治へ
1 幸/不幸をめぐる政治と社会の動向―幸福の指標化へ
2 幸/不幸の数量化の基盤としてのベンサムの思想
3 幸/不幸の数量的な測定と指標化
4 幸福感調査の認識論的諸前提と政治的機能
5 参加制限制度としての幸福感調査と幸福指標の作成
6 世論から「世感」へ―世論に基づく政治から幸福感覚に基づく政治へ
第3章 ケータイ社会と断片化する個人―通信メディアの変遷と社会意識の変容
1 通信メディアがもたらす自由と拘束
2 ケータイがもたらした変化と異同:既存の通信メディアとの比較から
3 ケータイ社会がもたらすつながりと疎外
4 ケータイ社会の行方:今後の考察のために
第4章 「ツール化」する地域社会/教育―地域社会と地域の教育力の意味変容
1 地域社会への期待の高まり
2 地域社会の範囲
3 地域社会の教育力
4 ユートピアとしての地域社会
5 限界化する地域社会
6 ネットワークとしての地域社会
第5章 不安な社会のコミュニティ―設計され、たちあげられる空間のために
1 都市空間における秩序の実現―同心円地帯理論
2 不安な社会のハビトゥス
3 「ストリート」調査の事例から
4 都市の不安から不安の都市へ
5 制度設計される「社会のセキュリティ」
第6章 社会をとらえる手がかりとしての犯罪と貧困
1 犯罪の定義
2 現代社会における「よそ者」としての貧困者
3 貧困の犯罪化
4 包み込む方法としての社会
第7章 親密圏と関係性の再編―家族・教育・ジェンダーというセキュリティ
1 制度的な家族と機能
2 ジェンダーの観点からの問題提起
3 家族と実存
4 家族になるということ
結びにかえて